執行沿いの嫁ヒロイン
「ただいま」
「!」
「おかえりなさい! 今日は早いんだね」
「ああ、上司に偶には早く帰れと言われてしまってな……」
「……」
「どうした?」
「裕也さー、このシャツ好きだよね」
「ん?ああ、これか」
「この前洗濯してる時にふと思い出したんだけどさ、
「そのシャツ、前も大けがした時に着てたよね?」
「……そうだったか?」
「そうだよ、なんかついてた血みたいなのめちゃくちゃ頑張って落としたし」
「(降谷さんの血だ……)」
「遊園地で大けがした時も着てたじゃない?」
「……よく覚えてるな」
「あの時、穴開いたし捨てようとしたら凄い勢いで止められたもん。覚えてるよ」
「……」
「このシャツに何かあんの?」
「……」
「こら、目を逸らすな」
「……お前が、」
「ん?」
「お前が就職祝いにくれたシャツだから、だ」
「……え」
「こ、このシャツそんなに年季モノなの?
う、うそでしょ……?」
「いや、おろしたのは結婚してからだ」
「え、それまで新品!? うそでしょ!?」
「使うのが勿体なくて使わなかったんだが……」
「いやいや、使ってよ」
「なんというか、ゲン担ぎ的な意味合いで気を引き締める時に着ているのでな……直ぐに汚したり穴を開けてしまうようだ」
「すまない」
「……」
「……梓?」
「あーーーーー!!!!」
「うお!? ……急に飛びつくな、危ないだろ」
「これだからお前って奴は!! かざみゆうや~~~~~!!!!」
「??な、なんなんだ?」
嫁たらしなの!? しかも天然!?あーもう大好き。。。
「あれ、ひ……風見さんじゃないですか!」
「……こんにちは、安室さん」
「お隣は……もしかして噂の奥さんですか?」
「え、あ、はい。嫁です」
「初めまして、いつも風見さんにお世話になっています。安室透と申します。
「風見さんには事件現場などでよく遭遇するんです」
「げ、現場……?」
「安室さんは喫茶店でアルバイトをしながらあの名探偵・毛利小五郎の助手をされているんだ」
「あ、探偵さんなんですね」
「はい!」
「旦那がいつもお世話になっています。(すごいイケメンなうえに愛想もよすぎて怖い)」
「あ、そうだ!奥さんも風見さんの事、注意してもらえませんか?」
「え?」
「風見さん、この間捜査で忙しかったのか晩御飯チョコレートだけの不摂生な生活送ってたみたいなんですよ!」
「えぇ!!???」
「(なんで言うんですか降谷さん!!!!!)」
「本当なの?」
「……」
「沈黙は肯定と捉えます」
「でも怒らないであげてくださいね。捜査で缶詰なのは刑事さんにはよくある事らしいので。
「それに、風見さんも奥さんに余計な心配を掛けたくないんだと思いますし」
「……今度からそう言う状況になったら即連絡してね」
「あ、あぁ」
「即差し入れ作って持っていくから。お前に拒否権はない」
「……了解」
「またポアロにも食べに来てくださいね!今度はぜひ奥さんとご一緒に」
「(思ったより奥さんの方が強いんだな)」
飛田って言おうとして嫁の前だから本名に言いかえるやつ。