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2019/06/04  bnal
 game

あくたがわとだざいくん






「太宰さん、みんなをよろしくね」
「おう!勿論だ!」
「じゃあ、気を付けて行ってきてね!」
「行ってくるぜ!」

「さ、潜書に行っていただいたので今から私も書類作りをば……」
「司書さん」
「芥川先生、どうされたんですか?」
「やだな、先生はやめてって何回も言っているだろう?」
「ふふ、すみません。太宰さんがずっとそう呼んでいらしたので……」
「妬けるねえ」
「心配しなくても太宰さんは芥川さんの熱狂的なファンですよ」
「そうじゃないんだけどな」


「まあいいさ」
「えっと?」
「みんな居なくなったところで、大人の時間と行こうか」
「え、え」
「ほら」
「え、あ、ちょ、芥川さ……っ!どこへ……」
「キミの部屋」




「司書さん」
「はーい……って、えっと……?」
「はは、からかっちゃってごめんね」
「えーっと……この間先輩が転生させていた……」
「芥川龍之介だよ」
「あ、あくたがわさん……!?」
「そんなかしこまらないでほしいな」
「いや、でも……」
「キミとはなんだか、昔に出会った気がするんだよね」

「懐かしい匂いがする」

 

「なんか、匂いますか?」
「匂いっていうか、正確には雰囲気かな」
「うーん……わたしは芥川さんには初めてお会いしたと思うんですがねえ……」

 

「あ、此処に居た!」
「おや、見つかってしまったね」
「助手がサボってどうするのよ!」
「え、芥川さんって先輩の助手だったんですか……ってしかもサボってたんですか!?」

 

「はは、バレてしまったね」
「いいこと?この人には気をつけな」
「え、あ、は、はい?」
「アンタの助手、常に連れときなさい」
「太宰さんですか?」
「そ。じゃないと食われるわよ」
「なにが食べられるでしょうか……?本が?」
「だめだこりゃ」
「はは、彼女の言う事は気にしなくていいよ」
「はあ、そうですか」
「とりあえず!芥川先生、仕事に戻りますよ!」

 

「またね」
「はい!芥川さん!」

 

「アンタねー。わかってやってるの?」
「なんのことかな?」
「とぼけないで」
「……」
「何が懐かしい匂いよ……気付いてるんでしょう?」
「さあ?」

 

あのこは知らない。
あのこは男の子孫であることを。
繋がりのない、妻の子孫であることを。

 

あのこは知らない。
男が遠くに、妻の面影を見たことを。

あのこは、知らない。




「失礼します」
「はーい。どうぞ」

「あれ、今日はもう仕事してないのかい?」
「今日の分は書類ちゃんとまとめたからね。優秀優秀」
「そうだね、偉い」

「ところで、それ何読んでるんだい?」
「んー?内田百閒先生」
「え?」
「私が初めて読んだ近代文学」

「これ、旅順入城式じゃないか」
「そー。最近知ったけど知ったけど芥川先生もこの話勧めてたよね」
「ああ、この話は素晴らしい。なのに評価が低いのが解せない」

「兄弟子なんだよね?」
「そうだよ」

「私さー、この話を高校生の時初めて読んでビビビッと来たんだよ」
「まさか自分がこんな仕事するとは思っても居なかったけど、当時はホントにこの話読んで電撃走って、ずーっと絵描いてたの」
「絵?」

「そう。情景が見えるから描くの」
「旅順入城式とか、蘭陵王入陣曲とか」
「谷崎先生の少年と魔術師とかも」
「幻想的だけど鬱っぽいのが好きで、あと朔太郎先生もちゅーや先生も読んでたよ」
「でもやっぱり、私にとっては百閒先生が始まりで、旅順入城式ほど衝撃を受けた話は無いんだけどね」

「……なに?じろじろ見られると恥ずかしいんですけど」


「いや、兄弟子を褒めてもらえるのはとても嬉しいんだ」
「でも、僕の話は読んだこと無いんだろう?それは少し妬けるね」
「教科書では習ったけどね、それ以外読んだことは無い」

「もっと君を知りたいけど、もっと僕も知ってほしい」
「ん?うん?」
「今度、昔描いた絵を見せてよ」
「んー?見つかったらね。この間ちょっと探してたんだけど見つからなくて」
「ああ、見つかったらでいいさ」





「太宰くーーーん!!」
「お、司書さん。どうしたんだ?」
「えらい息切らして走ってきゃはったけどどしたん?」

「こ、」
「こ?」

「この間言ってたお正月の外出!!行けるって!!!」
「三が日は一応図書館休みだから、その間なら各自自由にしていいって!」

「ま、マジかよ……!?」
「まじだよー!よかったね!!」

「あ、三が日は政府も動いてないからさ、念のために一緒に行く人も聞きたいんだけど、オダサク先生と坂口先生でいいのかな?」
「あー……今回は俺とオダサクじゃねぇんだ」
「え、太宰くん、オダサク先生と坂口先生外に友達居たの!?」
「ケッケッケッ。何気におっしょはんキビシーなぁ」
「お前らうるせーよ!ってか司書さんも地味にひでーし!」

「今回はな、春夫先生と芥川先生なんだよ!」
「……」
「……えっ」
「……ええ?」
「え、太宰くん、嘘はいけないよ……嘘は……」

「なんっっで!?なんでそうなるわけ!?司書さんさぁ、俺の扱い悪くない!?」
「いや、悪くないでしょ!!どうみても太宰くんの事可愛がってるでしょ!?」
「せやで、太宰クン。おっしょはん、太宰クンの事よぉーわかったはるから、余計に信じられへんだけやで」
「ま、俺たちが最初に聞いた時も似たような反応しかできなかったからな」

「フッフーン。いいだろ、すごいだろ!春夫先生とは色々あったものの斜陽の一件で少し解決したし、その春夫先生じきじきにお誘いいただいたんだ!」
「う、うそでしょ」
「うそじゃねーよ!んで、その後芥川先生とお会いした時に一緒に行ってもいい?って聞かれたんだよ!やばくない?すごくない?」
「太宰くん、来年の運使い果たしたんじゃない?それとも志賀先生も一緒とか?」
「はぁ!?アイツの名前出さないでくれる!?違うから、ほんと違うから!!」

「春夫先生と芥川先生と俺の三人だから!!」
「う、うん……わかった……わかったよ……」

「でもさー、太宰くん、よかったね!」
「ん?」
「いや、ほら、最初此処に来た時は佐藤先生がよそよそしいってめちゃくちゃ悩んでたじゃん?」
「少しずつだけど、和解に向かってるなら何よりっていうか……それに芥川先生とも」
「未だに緊張してうまく話せない太宰くんが心配ではあるけど、楽しんできてね!土産話待って……」


「司書さん。」

「はい!芥川先生!何かありました?」
「潜書していた夏目先生と泉先生が戻って来られたよ」
「ありがとうございます!では行きましょうか」
「そうだね。あ、太宰くん」
「は、はい……!」
「初詣、楽しみにしているよ」
「こ、こ、こ、光栄です!不束者ですが、よろしくお願いします!」
「では失礼しますね、太宰くん、オダサク先生、坂口先生」


「なあ、ずっとワシ、聞きたかった事があるんやけど」
「なんだよオダサク、改まって」
「太宰クンとおっしょはんは別に付き合ってるわけでもなんでもないんやんな?」
「はぁ?んなわけあるかっつーの。転生したのが早かったから俺を使うことが多かっただけで、別になんの特別視もされてねーよ」
「まあ、ちょっと甘いけどな。太宰には」
「ちょっとっていうかだいぶやけどな」
「なんだよ、お前ら結局何が言いてえんだよ!」

「あの芥川センセの目見た?って話や」
「ん?ああ、司書さんに対するアレか」
「なんや、気付いてたん?」
「何回も向けられてるから当然だろ。別になんとも思ってないとは言い切れ無いけど」

「あの二人、なんだかんだで両想いだから大丈夫だろ」

「は?」
「あ?」
「なんだよ、お前ら気付いてないのか?」
「司書さん、芥川先生にだけ明らかに乙女かましてんじゃん」
「なんそれ、知らんし」

「芥川先生、此処に来てからずっと助手してんだろ?」
「あれ、司書さんが芥川先生に惚れたからだよ。多分」
「最初のころは休む間無く戦ってた俺の為に先生を助手にしたらしいけど、そんなこと多分すっかり忘れてるだろうな」
「ほら、先生結構ぽやーっとしてて……どっちかっていうと助手としては……な?」

「せ、せやな」
「実際、報告しに司書室に行ったら司書さんが芥川先生の代わりに仕事してたのなんて一回や二回じゃねーし」
「面倒が増えても一緒に居たいんだろ?」

「ま、そのおかげで有害書への潜書率ナンバーワンの俺も、図書館戻ってきて最初に芥川先生におかえりっておこぼれで言ってもらえるからラッキーだけどさ!」

「いい加減俺も大尊敬している芥川先生からあの目向けられるの嫌なんだよね」
「独占欲強い先生も素敵だけどさー」
「俺、司書さんにも幸せになってほしいから、芥川先生と引っ付いてほしいんだよね」
「司書さんってさ、なんか結構無欲じゃん?鈍感だけど」
「あんな若いのに苦労も絶えないわけだし、些細な幸せってあってもいいとおもうんだよね」

「それがセンセって?」
「そ」

「でさ、もしあの二人が引っ付いたら、俺の大好きな人たちが肩を寄せて俺におかえりって言ってくれるわけじゃん?」
「人間関係拗らせまくってる俺が言うのもなんだけどさ」
「なんか、そういうのいいなーって」

「太宰クン、それ息子ポジションやん」
「お、それ!そういう感じ!良いねー、先生の子供!」
「……良いわけねーだろうが」
「しかも別に太宰クンだけに言うてるワケちゃうからな?」

「いちいち細かい事は気にすんなってーの」
「ま、っつーわけだから。初詣から帰ってきた後の先生と司書さんのちゅーもく!ってな」
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