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ラベンダーちゃん







「あのー……ら、ラベンダーさん?」
「なぁに?」
「こ、この状況が見えないのですが……」
「見たまんまだと思うけど?」
「え、えぇー……」

珠由良族の次男、ラベンダーさんから何故かいわゆる壁ドンをされていた。
しかもびっくりした私の足の間にするりとラベンダーさんのおみ足が入った。驚きすぎてもう身体はまったく言う事を聞かない。
目の前にはラベンダーさんの綺麗なお顔…あのほんとよくわからないんだけどとりあえずやばい。
ついこの間までいがみ合っていた珠由良・珠黄泉両家は、一つの家族を巻き込んだ事件をきっかけに昔のように協力関係を築いていた。
家族や店の従業員たちは銃刀法違反やら何やらで捕まってしまったが、わたしはと言えば、たまたま友達と旅行に出かけていて事件に巻き込まれる事なく、珠黄泉族頭領代理と言った形で珠由良族のみなさんと良好な関係を結びつつある。
そのうえ今は珠由良の皆さんのお店で働かせもらっている状態で、何から何までしていただいて、頭が上がらないとはまさにこの事だ。

そんな矢先のこの状況。わたしには全く話が見えない。何と言っても珠由良族の三兄弟はみなさんオカマで、男が好きと聞いていたし、実際一緒に住んでいても女子会のノリで話が弾んでいた。はずだった。

「ら、ラベンダーさん?」

壁についていない方の手がわたしの頬をなぞる。その優しい手つきに肩が跳ねた。思わずぎゅっと目を瞑るわたしに「怖がらないで。」と優しい声が降ってくる。


「怖がらせる為にこんな事はしないわよ」
「えっと?」
「ちなみに言うと冗談でも無いわよ?」
「ん?」
「……アンタ鈍いって言われない?」
「よく言われます……マホちゃんから特に。」

思い浮かぶのは気の強い姉の姿。珠黄泉族の副頭領でもある姉はママの気の強い部分をしっかりと受け継いでいて、それに比べてわたしはのほほんとしすぎていると小さい頃からよく急かされた。


「一回しか言わないからよく聞きなさい」
「はい」
「好きよ」

耳元で聞こえた声は幻聴だったのだろうか。

「え?」
「もう言わないからね」
「え、で、でもラベンダーさんって……」
「オカマだって女に恋をしてもいいんじゃない?」

「自分でも信じられないけど、ね」


「そういうアンタはどうなのよ」
「え、あ……」
「まあ、知ってるけど」
「え!?」
「気付いてないとでも思ってたの?バレバレよ」
「ま、そこが可愛かったけど」

「ママにも言われたし、ここらでお互い孫の顔見せるのも親孝行じゃないかしら?」

妖しく笑うラベンダーさんを目の前に、わたしはただ降参と両手をあげるしか出来なかった。
もう顔があげられないぐらい熱い。夢だったらどうしよう。ラベンダーさんの仕草ひとつひとつに振り回され、舞い上がるわたしは孫の顔と言うキーワードを聞き逃していた事に気付いて放心状態になるのだった。わたしにはいきなり刺激が強すぎる!



おまけ
長男と三男の会話

「あの子、ラベンダーの毒牙にかかっちゃったけど大丈夫かしら……」
「さあ?心配っちゃあ心配だけど相愛なんだしいいんじゃない?」
「そうだけど……ラベンダーってアタシ達の中で見た目は一番女に近いけど中身は一番男よね」
「これじゃあオカマじゃなくて女装家ね」
「でもこれで孫の顔を見せろってママに強く言われなくなるからちょっと安心」
「それもそうね」

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タナカユキ
性別:
非公開
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