ネズとマリィとバンギャ

「次の人」

「は、はひ……！」
「お、おねがいします」

「ネズさん、あの、これ……」
「ああ、はい。ありがとうございます」

「おや」
「へ？」

「……ようやく名前と顔が一致しましたね」
「え、」
「名前は梓でいいですか？」
「え、あ、はい」
「これからもエール、待ってます」
「あ、ありがとう、ございます……」

「ネズさん……ファンレ、ほんとに読んでるんだ……」

「梓」
「マリィちゃん！　こんにちは！」
「うん、こんにちは」
「ナックルシティで会うの初めてだね！」
「梓が前にナックルシティによくいるって聞いたから来たんよ」
「よく覚えてたね！？　私の職場この辺なんだ～！」

「梓、今日はライブ行かんの？」
「今日はねぇ……定時に帰れたらダッシュする予定だよ！　残業したら諦めるしかないけど……」
「そっか……」
「マリィちゃんは今日も行くの？」
「うん」
「間に合えば一緒に見ようね！」
「……うん」

「あ、あ～～……あとじゅっぷんでていじ……ざんぎょう、きまった、だめだ」
「マリィちゃんには連絡しておこ……」

「あ、梓からメール来た」
「梓？　ああ、あのよく来てる子ですか」
「アニキ知っとーと？」
「この前のサイン会でようやく顔と名前が一致しましてね」
「今日は来れんってさ」
「……そうですか」

「残念？」
「別に。誰が居ようと居まいと俺は歌を届けるだけです」

「梓はアニキと私の関係、知らんよ。言うとらんよ」
「……そうですか」

「それでもこうやって気使ってくれるんよ。ええ人なん」
「ではそのいい子をライブ終わりにでも晩飯に誘いますか？」

「……ええの？」
「お前がそこまで饒舌に話しているのを聞いて、興味がわきましたよ」

「え、まって、マリィちゃんのいつも話してたお兄さんって！！！？？？？　え！！！！？？？」
「ほら、気づいとらんかった」
「あんだけライブに来ていたら知ってるもんかと思いますがね」
「梓、エール団とも仲ええのに」

「え、ちょっと、ほんとに……え……」

「とりあえず座りなさい」
「そーそ。ごはんたべよ、梓」